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豊かな島の営みとゆるやかな島時間を体感

MV 豊かな島の営みとゆるやかな島時間を体感

姫島村 世界農業遺産の里 日本ジオパーク

伊美港から村営フェリーで20分。ここからワクワク感が高まっていく。

「こんにちはー」。
電動エコカーを運転しながら、島の人々に声をかけるガイドの吉田龍夫さん。
姫島で生まれ育った吉田さんには、「島の人のほとんどが知り合い」だ。
エコカーは時速19km。海風に吹かれながらのんびり進む。

姫島は30万年以上前の火山から生まれた島。
ガイドと巡る姫島ジオパークツアーでは、さまざまな火山活動の名残や、古事記、日本書紀にも記された島の神秘に触れることができる。吉田さんは34歳でUターンして姫島村役場に務め、退職後、島を案内するガイドになって7年。
「自分のふるさとなのに初めて知ることばかりで、目からウロコでした」という。
いちおしスポットは、国指定天然記念物「姫島の黒曜石産地」観音崎。
歩いて展望台まで上ると、黒曜石の断崖の向こうに真っ青な周防灘の眺めが広がる。
淡い墨色をした黒曜石は全国でも姫島だけだそう。

火山の島・姫島では、さまざまな地層や火山地形を見ることができる。

火山の島・姫島では、さまざまな地層や火山地形を見ることができる。

古庄家の屋敷にも立ち寄る。
吉田さんが「姫島の救世主」と呼ぶ、元庄屋の古庄家は、稲作が少ない島にサツマイモを導入し、島民を飢餓の苦痛から解放したという。さらに車を走らせながら、吉田さんは島の暮らしのことを話してくれる。
明治初期、魚を集める魚付林の大切さを知り、山に木を植えるなどの活動を進めた先人のおかげで島に漁業が栄えたこと。
離島生活の苦労も地域の連帯感で乗り越えてきたこと。
塩田跡地での車えび養殖など、地の利の悪い離島ゆえに助け合って資源を生かし、次世代に残そうという取り組みこそが世界農業遺産の精神の真髄とも言える。

姫島の発展に多大な功績を残した古庄家の屋敷。サツマイモ栽培の導入や、塩田の造成、波止場の築造などを手がけた。

姫島の発展に多大な功績を残した古庄家の屋敷。サツマイモ栽培の導入や、塩田の造成、波止場の築造などを手がけた。

希少な渡り蝶アサギマダラの休息地や、姫島七不思議の拍子水などを回り、車はひめしまブルーラインをトコトコ走って、終着点へ。気がつけば、このゆっくりさがすっかり体になじんでいる。

「ガイドになってふるさと再発見ができて、それを皆さんに聞いてもらえるのが楽しいです。姫島に来たらいつのまにか時間がたっていた、と思っていただけるようなおもてなしができれば」と吉田さん。そんなゆるりとした島の空気と、この島を愛する人々との出会いを体験できるのが、エコカーツアーの魅力だ。