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良質なクヌギから生まれる最高級の茶の湯炭

炭は茶道の必需品

茶会などでは菊炭とも呼ばれる美しい茶の湯炭が使われ、その切り口はまさに菊の花のよう。

「昔から茶の湯炭にはクヌギ。細かくきれいな菊割れはクヌギじゃないと出ないんです。火持ちもよく、火力もお茶の鉄釜にちょうどいい加減です」と話す国東製炭窯長の春山林生さんは、茶道もたしなむ炭焼き職人だ。
全国で茶の湯炭の産地が減少する中、国東半島のクヌギを使い、茶の湯炭を専門に生産している。

木炭には大きく分けて黒炭と白炭があり、白炭の代表格が「備長炭」、黒炭の代表がこの「茶の湯炭(菊炭)」だ。

木炭には大きく分けて黒炭と白炭があり、白炭の代表格が「備長炭」、黒炭の代表がこの「茶の湯炭(菊炭)」だ。

大分県のクヌギ蓄積量は全国の約24%と日本最大。
中でも国東のクヌギは品質が良いといわれる。茶道で炭点前(すみてまえ)に使われる茶の湯炭は、煙が出ず、かつ火持ちが良く、さらに見栄えが求められる。
良質なクヌギと職人の技術、どちらが欠けても良い茶の湯炭は作れない。

「千利休の時代、茶の湯の肝要は『三炭三露』にありといわれたように、炭のおこり具合や打ち水 (露) の濡れ具合で、お客は亭主の考えを知り、互いに心を通わせました。時計のない時代、炭はお茶室の中の時間を計るのになくてはならないものだったのです」と春山さん。
その心を受け継ぎ、大切な炭を最高品質に仕上げるため技術と経験を積み上げている。

クヌギは10月~3月に山で伐採するほか、しいたけ生産者から原木に使った残りを分けてもらう。窯詰めして火を焚き続けること12~13日間。途中、「着火」「ねらし(精錬)」という難しい工程を経て、焼き上げる。
加工や出荷のスタッフは地域の人。
5基の窯も彼らと手作りで築いたものだ。

我々は原料も人も場所も国東、本当の意味の地場産業です。これから技術を磨いて、全国のお茶人に国東を発信していきたい。地元の若い人にもぜひ炭焼きの技術を身につけていただければ」と春山さん。製炭や炭飾り作り体験もできるので、美しい菊炭に一度触れてみてほしい。かつてこの地に栄えた炭焼きの文化が、付加価値の高い茶の湯炭という形で再興され、地元のクヌギ林の手入れ・再生につながっていく。新たな循環が始まっている。

窯詰めしたら12~13日間、火を焚き続ける。炭化が始まる「着火」工程までは、ほぼ付きっきりで火加減を調整していく。

窯詰めしたら12~13日間、火を焚き続ける。炭化が始まる「着火」工程までは、ほぼ付きっきりで火加減を調整していく。