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世界農業遺産とは

世界農業遺産とは?(GIAHS)

食料の安定確保を目指す国際組織である、国際連合食糧農業機関(FAO)は、グローバル化、環境悪化、人口増加の影響により衰退の途にある伝統的な農業や文化、土地景観の保全と持続的な利用が図られている地域を「世界農業遺産」に認定しています。世界的に重要な農業地域を次世代に引き継ぐため、2002年に開始したプロジェクトです。

世界遺産( 文化遺産) との違いは?

ユネスコ世界遺産(文化遺産)は、遺跡や歴史的建造物などの「不動産」を登録、保護するのに対し、世界農業遺産は、次世代に継承すべき伝統的な農業の「システム」を認定し、その保全と持続的な利用を図るものです。

世界農業遺産認定例

2021年1月時点において、「世界農業遺産」の認定登録数は、世界中で22ヶ国62地域となっています。
日本では、2011年6月に「能登の里山里海」(石川県)、「トキと共生する佐渡の里山」(新潟県)、2013年5月に「クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環」(大分県)、「静岡の茶草場農法」(静岡県)、「阿蘇の草原の維持と持続的農業」(熊本県)、2015年12月に「清流長良川の鮎」(岐阜県)、「みなべ・田辺の梅システム」(和歌山県)、「高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合システム」(宮崎県)、2017年11月に「持続可能な水田農業を支える『大崎耕土』の伝統的水管理システム」(宮城県)、さらに、2018年3月に「静岡水わさびの伝統栽培」(静岡県)、「にし阿波の傾斜地農耕システム」(徳島県)が認定されています。

日本の世界農業遺産認定/11地域

能登の里山里海

石川県

能登の里山里海

棚田やため池で形成される里山の景観と、海女(あま)漁、揚げ浜式製塩など、里海の資源を活用した伝統技術が受け継がれている。農村の暮らしと結びついた風習や文化も多い。

トキと共生する佐渡の里山

新潟県

トキと共生する佐渡の里山

山や深い森に恵まれ、豊かな生態系が維持されている。トキの餌場となる水田では、冬期湛水など「生きものをはぐくむ農法」とその認証制度を推進している。

静岡の茶草場農法

静岡県

静岡の茶草場農法

静岡県の茶産地では、おいしい茶作りのために、 ススキなどの草を用いる「茶草農法」を実施し、地域固有の生物多様性も保全している。

阿蘇の草原と持続的農業

熊本県

阿蘇の草原と持続的農業

世界最大級の阿蘇のカルデラ周辺に広がる草原の持続的な活用を通した循環型農業の結果、自然環境が保全されている。

国東半島・宇佐の農林水産循環

大分県

クヌギ林とため池がつなぐ
国東半島・宇佐の農林水産循環

効率的な土地・水利用が実践され、豊かな農村文化が形成されている国東半島宇佐地域では、豊かな農林産物と生態系をもたらすクヌギ林とため池による循環型農林業が行われている。

静岡の茶草場農法

岐阜県

清流長良川の鮎
-里川における人と鮎のつながり-

長良川は流域の人々の日々のくらしや水質保全活動により清らかな流れが保たれるとともに、その清流では鮎が育ち、鵜飼漁をはじめとした伝統的な漁法が受け継がれ、地域の人々が鮎からの恩恵を享受している。人の生活、水環境及び漁業資源が相互に連関する長良川の里川システム

みなべ・田辺の梅システム

和歌山県

みなべ・田辺の梅システム

養分に乏しい礫質の斜面を利用し、梅林としての利用と周囲に薪炭林を残すことで水源涵養や崩落防止等の機能を持たせるとともに、薪炭林に生息するニホンミツバチと梅との共生等、地域資源を有効活用して高品質な梅を持続的に生産している。

高千穂郷・椎葉山地域の山間地農林業複合システム

宮崎県

高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合システム

平野が少ない山間地において、針葉樹林と 広葉樹林で構成されるモザイク林等による森林保全管理、伝統的な焼畑農業、急斜面に築かれた水路網を有する棚田の米作りなどの複合的農林業と神楽など、特色ある伝統文化を継承している。

「大崎耕土」の巧みな水管理による水田システム

宮城県

持続可能な水田農業を支える
「大崎耕土」の巧みな水管理による水田システム

冷害や洪水、渇水が頻発する自然条件を耐え抜くために、巧みな水管理や屋敷林「居久根」による災害に強い農業・農村を形成している。

能登の里山里海

静岡県

静岡水わさびの伝統栽培
-発祥の地で伝える人とわさびの歴史-

日本の固有種であるわさびを、沢を開墾して階段状に作った わさび田で、肥料を極力使わず湧水に含まれる養分で栽培する伝統的な農業を継承している。

にし阿波の傾斜地農耕システム

徳島県

にし阿波の傾斜地農耕システム

急傾斜地にカヤをすき込んで土壌流出を防ぎ、独自の農機具を用いて段々畑を作らずに斜面のまま耕作する独特な農法で、在来品種の雑穀など多様な品目を栽培している。

国内の事例を見る

アジア(日本を除く)の世界農業遺産認定/30地域(掲載写真は12地域)

イフガオの棚田

フィリピン

イフガオの棚田

棚田による水資源の共有、海抜1000mの環境にも耐える水稲品種の育成により、巧みなかんがいシステムが発展。ユネスコの世界遺産(文化遺産)にも登録されている。

カシミールのサフラン農業

インド

カシミールのサフラン農業

固有のサフラン栽培が2500年以上受け継がれており、現在も17000家族が取り組む。生産性、マーケティング、品質と価格の向上、直販などの取り組みを積極的に行う。

コラプット伝統農業

インド

コラプット伝統農業

古来、薬草や薬用米の原産地として有名。多数の少数民族が原始的な農業生活を営む。400種近い米を栽培する農家もおり、固有植物が数多く存在する地域でもある。

海抜以下での農業システム

インド

海抜以下での農業システム

海抜ゼロメートル地帯に水田が広がる珍しい環境。そこに住み、漁業をしながら、米などの作物を栽培する技術を開発。150年以上の歴史があり、多様な生物を育む場にもなっている。

水田養魚

中国

水田養魚

2000年前の漢王朝時代から続くシステム。青田県では、田魚が害虫や雑草を防いだり、代替肥料となるほか、日々の食料や収入源として、さまざまな役割を担っている。

ハ二族の棚田

中国

ハ二族の棚田

集落は山腹に作られ、上に森林、下に棚田が形成されている。貯水池はないが給水量が豊富。その独特なかんがい方式と古くからの農業生産方式が今も営まれている。

万年の伝統稲作

中国

万年の伝統稲作

伝統的な米文化を継承。米の在来種を栽培する水田と、治山治水の役割を果たす周囲の森林が、生物多様性の保全と、持続可能な農業環境をもたらしている。

トン族の稲作・養魚・養鴨

中国

トン族の稲作・養魚・養鴨

1000年以上、水田での養魚・養鴨システムを継続。この水田でのシステムは地域の生物多様性や水・土壌の保全、病害虫の抑制、気候への適応などに役立っている。

アオハンの乾燥農業システム

中国

アオハンの乾燥農業システム

アワやキビなどが多く栽培される。これらは災害救済用の主作物で、経済的にも重要な役割を担う。乾燥地域営農組織には中国古代の農業と草地文化をつなぐ役割もある。

プーアル茶農業生態系システム

中国

プーアル茶農業生態系システム

茶の原産地として知られる。1800年以上茶の木を養い、茶の使用法を最初に身につけた民族がいまも住む。生態系および古代の茶道文化の保護にも役立っている。

会稽山のカヤ栽培

中国

会稽山のカヤ栽培

秦の時代からカヤの木を植栽していたとされる。カヤは食用、薬用、加工品の原料に利用する。接ぎ木の技術や暮らしに密着した加工の知恵が豊富。

宣化のぶどう栽培の都市農業遺産

中国

宣化のぶどう栽培の都市農業遺産

1300年以上の歴史があるぶどう栽培。ほとんどが家の裏庭でじょうごのような形をした棚で行われている。都市部にある農業遺産である。

アフリカ/8地域(但し、掲載写真は3地域)

マグリブのオアシス

アルジェリア、チュニジア、モロッコ

マグリブのオアシス

かんがい施設に支えられ、ナツメヤシをはじめとする多様な樹木や作物が共存。厳しい天候の地域にもかかわらず、さまざまな果物や野菜が生産されている。

マサイの伝統

タンザニア、ケニア

マサイの伝統

マサイ・ダバド族は、先住民の間で古くから伝わる伝統知識をもとに牧畜を営んできた。今も民族や地域における経験を活かしながら社会や環境の変化に適応している。

アグロフォレストリ―

タンザニア

アグロフォレストリ―

材木用の樹木やバナナの木々の間で、コーヒーや食用作物、ハーブなどを栽培するシステムが構築されている。多様な作物栽培を可能にし、病害虫管理にもすぐれている。

中南米/3地域(但し、掲載写真は2地域)

チロエの農業

チリ

チロエの農業

ばれいしょ原産地の1つで、現在も約200種の地域固有のばれいしょが生産されている。その先祖伝来の慣行は、おもに女性により何世代にもわたって伝承されている。

アンデス農業

ペルー

アンデス農業

ばれいしょ畑の周りに溝を掘り水を貯め、昼間の日射で温められた水を気温の下がる夜間に畑に流し、霜よけにする。海抜4000mの厳しい環境に適した農業システム。

欧米/7地域(但し、掲載写真は2地域)

アクサルキアのレーズン生産システム

スペイン

アクサルキアのレーズン生産システム

バローソの農業林間放牧システム

ポルトガル

バローソの農業林間放牧システム

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